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>遡行(1996)
遡行
称賛が零れて落ちる硝子片と風の諍いが思うにままならない想念の流れを曳き寄せて
地面に映った影のざわめき、手には取れないあなたに似せて私の中に灼きついた午後
草たちはうなだれて行き過ぎる季節を望んでやまないそのことは伏せられて空は佇み
記憶は過去の輪郭になかったものを配されて私を静かな手並みで違った場所に導く
沢山の墓地が開け、それぞれの物語が埋葬されていると誰でもない誰かから私信が届き
言葉へと卑しめられていく記述の表層から洩れ落ちたものへの鎮魂は見過ごされる
私に見えるものをデッサンして目の前に現れる肖像はいつの時にも言葉足らずに貧相だ
深海から陸にあげられる途中で形が崩れてしまう脆さに似てそれは知ることができない
希望とは手付かずに美しく手を付けると痛みに晒されて呼吸が絶えた平面へと移行する
だというのに私たちは糸を下げる闇の底へと希わない苦しみに耐えられない繰り返しで
断層となった異海から対応しない対象をこの世界へと召喚しその都度に打ちひしがれて
別物となった骸を描くことしか許されない痛みに絶え続けることでのみ私であり続ける
断片と連絡させる交通と意味を広げる対立がせめぎあう事なく手を取り合うのを糾弾し
しかし自らが時刻と併走せずにはいられないと打ち明けないしたり顔の連中たちの毎日
遠くなく水没する予測に満ちた安寧と騒ぎだすだろう暴言を抱いて眠るこの時にも
未完のままの楽章と楽団の喪失に苛まれるあてもない風評と交ざりあって生まれる日付
諍いが降りしきる雨の中では子を揺らず腕が奪われて美しい言葉の悼みが寄せられる
どうだこの毎日にも使い古された言葉と反復される表情しかあるまいと皮肉を浴びせる
あらかたの寂しさが残照に灼かれて紡がれることのない伝記と片腹痛い評伝が充ち
相変わらずの救いのなさが立ち消えフィルムだけの戦争が均一な反復で清算される
便宜的な区域に贖罪が沸き、訪れた朝の静けさに救われなどしない人々は置き去りに
生まれてやまない風の地層と遅れる融和の調和から据えられる記憶の満ち引きの際から
望まれるままに形作られた視点の人称と距離の人称が求めあってやまないことに
決してかなわない手と手を取り合って歩く表記を献じてせめてもの慰めとする私たちは
記憶の連なりに後押しされているこの時にも微睡んで一瞬の合致から溯ることを夢見て
そのことでやりすごす時、生きながらえることを見ずにすませて嘆息し今日も耐える
目眩く正気でなどやりずごせないこの毎日の集積と唾棄されてやまない大量の音声に
貼り合わせられた硝子の細工ほどの脆さでもって糾弾する、稜線のように不確かに
降りしきるきらめきと迎え入れるあなたの他意のなさを剥奪する、連中が口々にして
耳など貸さないためには踊りだす河口の声に手を差し伸ばさなければならない
(1996年製作)
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